側弯症のセルフケアというと、ストレッチや筋力トレーニングを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、運動を始める前に一度確認してほしいことがあります。
それが、**呼吸をした時の肋骨の動き**です。
右側は手を押し返すように動くのに、左側はあまり動かない。息を吸うたびに片方の肩だけ上がる。前には空気が入る感じがするのに、背中側は動きにくい。
このような違いに気づくことがあります。
ただし、最初に大切なことをお伝えします。
手で触れた呼吸の左右差だけで、側弯症の状態や肺機能を判断することはできません。
このチェックは診断や矯正を目的としたものではなく、自分の呼吸の特徴に気づくための観察です。
目次
側弯症と呼吸はどう関係するのか
側弯症は、背骨が左右に曲がるだけではありません。背骨のねじれを伴い、肋骨や胸郭の形にも左右差が現れることがあります。
胸郭は、肋骨、胸椎、胸骨などでつくられています。呼吸をすると肋骨や胸郭が動き、その中で肺が広がります。
そのため、側弯症の方では胸郭の形や動き方に左右差が見られることがあります。
ただし、その程度は人によって大きく異なります。側弯症があるから必ず呼吸機能が低下するわけではありませんし、手で感じた左右差からCobb角や進行の有無を推測することもできません。
肺機能への影響は、カーブの大きさ、場所、胸郭の変形など複数の条件と関係します。必要な場合は、医療機関で診察や呼吸機能検査を受けて確認します。
1分でできる呼吸の左右差チェック
体調が落ち着いている時に、次の順番で行います。
1. 椅子へ楽に座る
背筋を無理に伸ばさず、普段に近い姿勢で座ります。両足は床へ置き、脚は組みません。
運動直後や食事直後は呼吸が変わりやすいため、少し時間を空けてください。
2. 左右の下部肋骨に手を当てる
脇腹に近い下の肋骨へ、左右の手を軽く添えます。強く押したり、身体を真っすぐに直そうとしたりする必要はありません。
3. 普通の呼吸を5回繰り返す
大きく吸おうとせず、まずは普段通りに呼吸します。
手のひらを押し返す動きが左右で違うか、片方の肩だけ上がらないか、息を止めたり力んだりしていないかを確認します。
4. 感じたことを短く記録する
「右の方が動きを感じやすい」「左肩が少し上がる」「今日は差が分からない」など、感じたままを残します。
正解を出す必要はありません。「分からない」も大切な記録です。
このチェックで見てほしい4つのこと
左右の手の動き
息を吸った時に、左右の手が同じように外へ動くかを見ます。
ただし、わずかな差を異常と決めつけないでください。手の位置や押さえる強さが違うだけでも、感じ方は変わります。
肩や首の力み
吸うたびに肩が大きく上がる、片方の首だけに力が入るといった様子がないかを確認します。
肩が上がることだけで呼吸の問題とは判断できませんが、背中や首の張りと一緒に出ている場合は、身体の使い方を見直す材料になります。
前・横・背中のどこが動くか
呼吸は前方だけでなく、横や背中側にも胸郭の動きが出ます。
自分で背中を触るのは難しいため、無理に確認する必要はありません。家族に見てもらう場合も、強く押さえず、服の上から軽く触れる程度にします。
息苦しさや痛みの有無
チェック中に息苦しさ、胸の痛み、めまい、強い不安感が出た場合は中止してください。
左右差よりも、症状が出るかどうかの方が重要なことがあります。
動きにくい側へ無理に吸い込まないでください
左右差に気づくと、「動かない方へもっと空気を入れないと」と頑張りたくなるかもしれません。
しかし、力いっぱい吸い続ける必要はありません。
大きな呼吸を何度も繰り返すと、めまいや手足のしびれなどが起こることがあります。また、側弯症のカーブや胸郭の形は一人ひとり違うため、特定の方向へ呼吸を誘導する運動は、全員が同じやり方になるわけではありません。
まずは普段の呼吸を観察するだけで十分です。
運動前後で比べる時の注意点
運動や施術の前後で同じチェックをすると、身体の感じ方の変化に気づけることがあります。
ただし、一回だけ「左右がそろった気がする」からといって、側弯症が改善した、胸郭が矯正された、肺機能が上がったとは判断できません。
呼吸は、姿勢、疲労、緊張、鼻づまり、食事、運動直後かどうかでも変わります。
比較するなら、次の条件をできるだけそろえます。
– 同じ椅子と姿勢で行う
– 手を置く位置をそろえる
– 普通の呼吸を同じ回数行う
– 運動直後を避ける
– 時間帯や体調を記録する
一回の結果よりも、同じ条件で何度か見た時の傾向を確認してください。
子どもの呼吸を見る時に大切なこと
成長期の子どもへ行う時は、「左が動いていない」「ちゃんと吸って」と注意しすぎないことも大切です。
呼吸を意識した途端に身体が固まり、普段とは違う呼吸になることがあります。
親御さんは、左右差を直す役ではなく、一緒に気づく役で十分です。
「今日は右の方が動いているように見えるね」
「苦しくはない?」
このくらいの声かけで構いません。
学校検診や病院で経過観察と言われている場合は、家庭のチェックだけで判断せず、予定されている診察を続けてください。呼吸の左右差が分からなくても、側弯症が進んでいない証明にはなりません。
医療機関へ相談したい症状
次のような症状がある場合は、セルフチェックを続けるだけでなく医療機関へ相談してください。
– 日常生活でも息苦しさがある
– 運動時の息切れが以前より強くなった
– 胸の痛みや圧迫感がある
– めまい、失神、唇の色の変化がある
– 咳や喘鳴が続いている
– 夜間に呼吸が苦しくなる
– 側弯症の見た目の変化が強くなった
急な強い息苦しさや胸痛がある場合は、早めの医療対応が必要です。
伊丹市で側弯症や呼吸の左右差が気になる方へ
兵庫県伊丹市のいたみいろどり整体院では、側弯症の方を見る時に、背骨の形だけでなく、胸郭、呼吸、骨盤、股関節、足元、日常動作まで含めて身体を確認しています。
ただし、整体院でCobb角や肺機能を診断することはできません。
側弯症の診断や進行の確認は整形外科で行い、息苦しさなどの症状がある場合は必要に応じて呼吸器内科などで評価を受けます。そのうえで、日常の姿勢や身体の使い方を見直していくことが大切です。
経過観察は、何も見ずに待つことではありません。
病院で状態を確認しながら、日常では呼吸や身体の変化に気づけるようにしておく。そのための一つの方法として、今回の1分チェックを使ってみてください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。呼吸の左右差チェックだけで、側弯症の角度、進行、肺機能を判断することはできません。
**参考資料**
[日本整形外科学会「側弯症」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/scoliosis.html)
[Tsiligiannis T, Grivas T. Pulmonary function in children with idiopathic scoliosis.](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22445133/)
[Kan MMP, et al. Is impaired lung function related to spinal deformities in patients with adolescent idiopathic scoliosis?](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36509885/)
[Negrini S, et al. 2016 SOSORT guidelines.](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5795289/)
[Gaillard L, et al. Chest wall motion symmetry during breathing.](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41468717/)
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