「側弯症の子は、カバンの持ち方を見てあげてください」
このようにお伝えすると、
「カバンで側弯症になるんですか?」
と聞かれることがあります。
先にお伝えすると、カバンが原因で側弯症になる、と単純に考えることはできません。
Scoliosis Research Society(SRS)も、重いリュックや教科書の入ったカバンが側弯症を起こしたり、背骨のカーブを悪化させたりするわけではないと説明しています。
ただ、重い荷物を毎日片側だけで持っていると、歩く時に身体が一時的に傾いたり、肩や背中に負担がかかったりすることはあります。
側弯症と診断されたお子さんや、病院で経過観察になっているお子さんの場合は、背骨の角度を判断するためではなく、学校生活で無理が出ていないかを知るために、カバンの持ち方を見ておく意味があります。
目次
新学期は、カバンの中身が増えやすい時期です
新学期や学期の途中には、教科書、ノート、タブレット、水筒、体操服、部活動の道具など、荷物が増えることがあります。
「今日はいつもより重そうだな」と感じる日もあるのではないでしょうか。
子どもは、荷物が重いと無意識に身体を傾けたり、肩をすくめたり、歩幅を小さくしたりします。
これは、カバンで側弯症が進んでいるという意味ではありません。
それでも、毎日の通学で同じ持ち方が続いていないか、本人がつらそうにしていないかを確認することはできます。
特に次のような持ち方は、一度見直してみてください。
– いつも右肩だけにカバンをかける
– リュックを片方の肩だけで背負う
– 手提げを毎回同じ手で持つ
– 重い荷物を持つと身体が片側へ傾く
– 歩いている時に片方の肩だけが上がる
– 何度も肩紐を直したり、カバンを下ろしたがったりする
まず見てほしいのは、リュックの肩紐です
家庭で確認しやすいのは、肩紐の状態です。
左右の肩紐の長さが大きく違っていないか、リュックが背中から離れすぎていないかを見てください。
肩紐が片方だけ長いと、カバンが左右どちらかへ寄りやすくなります。背中に近い位置で、左右の肩に均等にかかるよう調整すると、荷物の揺れも抑えやすくなります。
ただし、肩紐を同じ長さにすれば全員が楽になるとは限りません。体格やカバンの形によって合う位置は違うため、お子さんに「苦しくないか」「肩が痛くないか」と聞きながら調整してください。
また、リュックを両肩で背負っていても、片方の肩だけに負担が集中していることがあります。肩紐がねじれていないか、荷物が片側に寄っていないかも一緒に確認します。
荷物が多すぎないか、中身も見てください
カバンの持ち方を見直す時は、持ち方だけでなく中身も確認します。
毎日持ち歩かなくてもよいものが入っていないか、学校に置いておけるものはないかを、お子さんと一緒に整理してみてください。
学校のルールで可能であれば、置いて帰れる教材を決めるだけでも、通学時の負担は変わることがあります。
リュックの中で荷物が大きく動く場合は、重いものが背中から離れすぎないように入れ方を工夫する方法もあります。ただし、カバンの形や教材の量によって適した入れ方は違うため、無理に詰め込まないことが大切です。
「何キロまでなら大丈夫」と数字だけで決めるよりも、
– 肩や首が痛くないか
– 歩き方が変わっていないか
– 途中で何度も下ろしたくならないか
– 帰宅後に背中や腰がつらそうではないか
を見て、お子さんの身体に合っているかを確認してください。
歩いている時の身体の傾きも見てください
カバンを背負った状態で、歩き方を後ろや横から見てみるのも一つです。
片方の肩だけが上がっていないか。
身体がいつも同じ方向へ傾いていないか。
歩幅や腕の振り方が左右で違っていないか。
カバンを背負う前と後で、歩き方に変化がないか。
このあたりを、できれば自然な通学の様子に近い状態で見てください。
一度だけ姿勢が傾いたからといって、すぐに問題があると判断する必要はありません。荷物の重さ、疲れ、靴の状態、その日の体調でも歩き方は変わります。
ただ、同じ方向への傾きが何度も続く、痛みを訴える、歩くこと自体を嫌がるという場合は、カバンの調整だけで済ませず、原因を確認した方がよいことがあります。
手提げよりリュックが良い、とは言い切れません
一般的には、片方の肩だけで持つ手提げやショルダーバッグより、両肩で背負うリュックの方が荷物を分散しやすいと考えられます。
ただし、リュックなら必ず安心という意味ではありません。
片方の肩だけで背負っている、肩紐が長すぎる、荷物が多すぎる、カバンのサイズが身体に合っていない。このような状態なら、リュックでも負担が偏ることがあります。
大切なのは、両肩で背負うこと、背中に近い位置で使うこと、無理のない重さにすることです。
手提げを使う必要がある場合は、同じ側ばかりで持ち続けていないかを見てください。ただし、痛みがあるのに無理に左右を持ち替えさせる必要はありません。痛みや違和感がある時は、まず荷物を軽くする方法や、学校での持ち方を先生に相談する方法を考えます。
側弯症の経過観察中なら、カバンの工夫だけで判断しないでください
ここは大切なところです。
カバンの持ち方を変えたからといって、側弯症のカーブが改善するわけではありません。反対に、カバンを片側で持っていたから側弯症が進行した、とも言い切れません。
側弯症の状態や進行の有無は、整形外科での診察やレントゲン、Cobb角などを含めて確認します。
特に成長期のお子さんは、痛みがなくても定期的な確認が必要になる場合があります。経過観察と言われている場合は、病院から案内されている検査や受診の時期を優先してください。
そのうえで、
「重いカバンを背負うと右へ傾く」
「帰宅すると肩が痛いと言う」
「最近、途中で何度もカバンを下ろしたがる」
といった日常の様子をメモしておくと、受診時にも伝えやすくなります。
今日から家庭でできるカバンのチェック
最初から完璧に直そうとしなくても大丈夫です。まずは、次の3つを見てみてください。
1. 肩紐は左右同じように使えているか
片方だけ長くなっていないか、リュックを片方の肩だけで背負っていないかを見ます。背中に近い位置で、本人が苦しくない長さに調整します。
2. 持ち歩かなくてよい荷物が入っていないか
毎日使わない教材や道具を整理します。学校に置けるものは置くなど、ルールの範囲で荷物を減らせないか考えます。
3. 荷物を持つと歩き方が変わっていないか
肩の高さ、身体の傾き、歩幅、疲れ方を見ます。本人にも「どこが一番つらい?」と聞いてみてください。
カバンの持ち方を注意する時は、「ちゃんとまっすぐ持って」と叱るよりも、「今日は重くない?」「肩は痛くない?」と身体の感覚を聞く方が、変化に気づきやすいことがあります。
こんな時は、カバンの調整だけで様子を見ないでください
次のような場合は、持ち方を工夫するだけで長く様子を見ず、整形外科など医療機関への相談をおすすめします。
– 背中や腰、肩の痛みが続いている
– 痛みが強くなっている、夜も痛がる
– 手足のしびれや力の入りにくさがある
– 息苦しさや胸の痛みがある
– 学校検診で受診をすすめられた
– 肩や背中の左右差が急に目立ってきた
– 荷物を持っていない時も身体の傾きが強い
カバンの持ち方は、側弯症の診断や進行を判断するものではありません。あくまで、毎日の生活で無理が出ていないかを確認するための手がかりです。
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「子どもがいつも同じ側でカバンを持つ」
「経過観察中だけど、普段の生活で何を見ればいいか分からない」
「リュックを背負うと身体が傾く」
「荷物を持つと肩や背中がつらそう」
このような場合は、カバンだけを悪者にするのではなく、どの持ち方で負担が出るのか、荷物を下ろすと変化するのかを一緒に確認してみてください。
当院で確認できるのは、身体の使い方や日常動作の左右差です。側弯症の診断、Cobb角の確認、経過観察や装具などの治療方針については、整形外科など医療機関での検査と診察が基本です。
カバンの持ち方を整えることは、側弯症を治すための方法ではありません。
それでも、毎日使うカバンによる余計な偏りや不快感を減らし、お子さんが学校生活を少し楽に過ごせるかを考えるきっかけにはなります。
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※この記事は、側弯症の診断や治療を行うものではありません。カバンの持ち方だけで側弯症の進行や改善を判断することもできません。気になる左右差がある場合、学校検診で指摘された場合、痛み・しびれ・息苦しさがある場合は、自己判断せず医療機関へご相談ください。
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